■定年楽園生活 ~空間確保は大問題

■定年楽園生活 ~空間確保は大問題

現役生活では立って半畳、寝て一畳で十分だった。
いや決して十分じゃないけど、玄関を出れば家族には教えないパラダイスがあった。
会社には机とひじ掛けは無いが小さな椅子、たまに使えるソファー、給湯室というドリンクバーだってある。お昼は社員食堂で。なじみの吉野家でも松屋でもいい。独りのカウンターは自由だから落ち着く。夜は残業と言いながら、最低でも立ち飲み、部長なら接待と偽って会社の金で焼き肉に寿司。梯子したっていい。家族には教えない。

通勤電車ではほんの僅かなスペースしか与えられないが、これは、会社のモノを自由に活用させて頂くための日々の通過儀礼だ。文句は言わない。

定年(楽園)生活ではどうか。家族が自由に使っていた空間に、立って半畳、寝て一畳の人がいきなり広い場所を要求する訳だからたまったもんじゃない。何十年も固定していた既得権益の侵害である。いまどき、質の悪い地上げ屋だってやらない。

やっと嫁に行った娘の部屋など物置同然のスペースが余っていれば、そこを少し片づけて割り振ってもらえるかもしれない。娘の部屋の片づけがどれだけ大変か分かっている父親は地上げ交渉はしない。何とか譲ってもらえても、定期借地権でしかない。「赤ちゃんが出来たら使うからね」「絶対引き出しを開けないでよ!」などと各種の厳し制限付きとなるのだ。居心地の良い居場所と言えるかどうか疑問ではある。

玄関を出れば良いじゃないかというが、定期券という名の”乗り物フリーパス”を取り上げられて、身動きが出来ない。定期券の範囲が自由行動範囲だと気付いた。これからは自由だ言われても、これと言った用事が見つからない。
散歩すればと言われても長年の不摂生が祟って億劫だ。

意を決して、外に活路を見出してみよう。近所に受け入れてくれる施設はないだろうか。
定番は図書館だ。ただ、新聞、雑誌近くソファー。いわゆる図書館のグランクラスを確保するのは至難の業である。並んで走って。頑張るしかない。でも、確保したあとは、あまりの座り心地の良さに睡魔に襲われることが度々である。寝ている人も多い。

健康維持を最優先に考える方には公共施設のジムがある。図書館に通う方たちとの競合は無い。しかし、ただ座っているだけという訳にはいかない。

少しお金を払えば、シェアオフィスというしゃれた場所があちこちにある。長年の役目を終えた言わば”定年退職したオフィスビル”の有効利用である。内装をリフォームした古いビルに親近感を感じるに違いない。しかし、何もしないで座っているだけでは、ちょっと居心地が悪い。

公園は無料だが、日焼けと天候の変化に注意が必要である。冬は命にかかわる。
沖縄の友人から良い話を聞いた。パチンコ屋さんのフリースペースだ。駐車場はあるし、エアコンが効いている。少したばこ臭いのを我慢すれば、真夏の楽園だそうだ。だが沖縄は遠い。

ショッピングモールの椅子も使えそうだが、近所で噂になる危険性がある。

空間確保問題は、楽園生活の質に直結する切実な重要課題である。現役時代からできるだけ家庭内地上げをしておくことをお勧めする。

気ままに日向ぼっこしている野良猫だって、実はわたし達と同じ問題を抱えているのだ。決して追い払ってはいけない。と、思うようになった。

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